3話~ある日の晩の黒祷家~

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「実を言えば薫、私はあんたに期待してるんだ。」 「何を?」 「あんたはやっぱり宗秋の生まれ変わりだよ。健もそうだが、薫は健以上に宗秋に似てる。あんたが生まれてからずっと見て来たけど、仕草が宗秋そっくりだ。」 「そうなのか?」 「だから鮮姫も心がざわつくんだろうね。あれは彼女なりの愛情さ。」 「馬鹿呼ばわりすんのが愛情かよ……歪みまくってんじゃねぇか。」 「白銀だってそうさ。あいつもあれでいて、嫌いな輩には目もくれない所がある。」 つまり馴れ馴れしかったり、やたらと肩に腕を回してくるのは気に入っているからこそか。 確かに本人もそんな風な事を言ってたが……俺にそんな趣味はない! 「赤羽が直ぐに怒る理由だってそう。宗秋に似てるからこそ、薫にはからかわれたくないんだろ。」 だからって刀を抜いても良いってか? いや完全に悪いのは俺だけどな。 「朱岬はもっと分かりやすいね。あいつが興味のない相手の未来をいちいち計算したりするもんか。」 あぁ、狐の相がどうとかっていうあれか。 完全に外れてましたけれどもね。 「高茜は人見知りするし、蛇落と槌形は気に入らない相手には壁を作る。そう感じたことあるかい?」 「…………ねぇな。」 つうか高茜が人見知りなんて初めて知った。 蛇落と槌形は雰囲気で何となく分かる。 壁を感じた事は無いけどな。 「つまり、みんな期待してるのさ。」 「だから、何をだよ?」 「薫が、宗秋と並び立つ事を。」 俺にご先祖様と対等になれってか。 とんでもない注文だなおい。
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