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「―――――は?」
いやいや親父。
よく見ろよ。
アンタのその視線、確実に眼帯幼女が視界に居るはずだ。
「い、居るじゃないかっ!」
「どこに?」
「目の前っ!便器の上にちんちくりんが立ってるだろっ!」
「便器の上にちん〇んが立ってる?」
「立たねぇし言ってねぇっ!!!」
いい加減に通報されるぞ、色んな意味で!
「つうかマジで見えねぇのかよ!銀髪の女の子!居るだろ!」
「何度も言わせるな、見えんもんは見えん…………あぁ、そうか、もしかしてお前、座敷わらしを見てるんじゃないか?」
「はぁっ!?」
いや確かにそんな表現はしたけどさ。
こいつどう見ても海外製だぞ。
つかなんで座敷わらしが便所に居るんだよ意味わかんねぇよ。
「そうかそうか、ようやく我が家にも座敷わらしが来たか。いやぁ、これで安泰だなぁ。お~い母さん、警察呼ばなくて良いぞ~!せっかくの幸運が流れてしまう!トイレだけにな!はっはっはっ!」
「はっはっはっ!じゃねぇっ!」
俺の叫びはどこへやら。
愉快げに笑いながら、親父はお袋のもとに行ってしまう。
その背中を止めようと、あわよくば振りまかせようと必死に言葉を叩きつけたが、びくりともしやがらない。
こんなときだけあの親父の背中はたくましいから腹が立つ。
親父から話を聞いたんだろうな。
間もなくしてお袋の歓喜の声が聞こえた。
親父の笑い声が混じっているのは言うまでもない。
「………気は済んだかのう?」
不意に、声がする。
確認するまでもない。
ちんちくりんの声だ。
「ワシはあの程度の輩には見えんよ、いくら黒祷の者と言えどものう。」
その声に、恐る恐るちんちくりんに目を向ける。
眼帯の左側で、紅い瞳を内包した目が、柔和に歪んでいた。
可愛いとは微塵も思えない、鷹のような笑み。
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