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ちんちくりんはそのまま……便器に立ったまま、刀を振るうような動作で右手を前に。
リィンッと、鈴が鳴るような音がした。
音がしたと同時に、喉元に、ヒヤリとした感触があった。
視線を下げれば何が起きたか知るのは容易い。
見なければ良かったと後悔したね。
なにしろ喉元に、"刀が喰いついていた"
刀のクセに牙を持ち、口を開け、俺の喉元を食いちぎろうと待機している。
僅かに動くだけで牙がくい込む。
無闇に動けず、動く気にもなれず、それでも視線を動かせばその刀が恐ろしく無骨で巨大だと分かった。
「そう言えば……名乗るのが遅れたのう。ワシの名は紅羽じゃ。二度とちんちくりんなんて呼んでくれるな。」
あかばね?
いやいやどうみても外人だろお前。
フランソワとかアンジーとかそんな名前しか似合わねぇって。
これ以上馬鹿にするのは文字通り命懸けになりそうなんで口にはしない。
「まぁ、積もる話もあるでな。主の部屋に案内してもらおうかのう。」
マジか。
彼女だって連れ込んだ事ねぇんだぞ。
理由は我が家には盗撮やら盗聴やら犯罪行為を平気でやってのける大馬鹿夫婦がいるから。
「久しく居らなんだ我等の契約者じゃ。仲良くしようじゃないか、のう……"頭領"?」
紅羽が浮かべる凶悪無比な笑顔。
牙がくい込むのも無視して、口を開く。
言いたいことなんざ山ほどある。
意味わかんねぇ事ばかりだからな。
契約者ってなんだよ。
頭領ってどういう意味だ。
しかしそんな事より何より、
「…………マジ、漏れそうなんだけど……退いてくんない?」
それがこの場で一番、重要だった。
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