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黒祷の祖は、黒刀と名乗っていた。
この町、神流戯町(かんなぎちょう)は神が流れてきて戯れる場所とされ、黒刀とはそんな流れ神の戯れに巻き込まれた一族だ。
神とは何も、良いヤツばかりじゃない。
災いを呼ぶもの、病を運ぶもの、不幸を招くもの、度が過ぎた悪行を繰り返し、その結果、神にまで格上げされた悪霊なんてものもいる。
なんでか知らないがそう言った連中ってのは妙にツルみたがる。
街中でコンビニの前にたむろする不良がいるだろ?
あれと似たようなもんだろうな。
で、こいつらは神と呼ばれるだけあって、ツルむ場所は近所のコンビニではなく、町だったわけだ。
それこそが神流戯町。
はた迷惑な事に神様方はこの町をお気に入りになられたんだと。
親父曰わく、この町はもともと、そう言う役割の為に在るらしい。
とある大きな池……別にもったいぶってるわけじゃなく名前忘れた…とにかくその大きな池を中心に置いて広がるように発展し、池の北東と南西……つまり鬼門と裏鬼門に位置する場所にわざと鳥居が作られている。
もともと、鬼門と言うのは神々の通り道だという云われもあり、例に漏れず神々はこの地に来るのだが、裏鬼門へと繋がっている事、中心に陰の性質を持つ水が在ることで、良くないものばかりが集まってくる。
そうやって余所で悪さするヤツらを一カ所に集める事を目的とした町なのだ。
ご丁寧に、鳥居の傍では猿の木像が池に向かって睨みをきかせているので、鬼門や裏鬼門から入ってきた連中は町から出られなくなる。
神流戯町とは良く考えたもんだ。
頭に"悪"を付けるべきだったと俺は思うけどな。
まぁ、町の由来なんざ今ではほとんど知る人間は居ないだろうけどな。
さぁ、話はここからだ。
問題は、そうやって集めた悪霊及び神々を、どうやって退治するか。
当然ながら、放置してたらこの町が危険だからな。
周りに誰も住まなきゃ良いだけの話なんだが、こんなオカルトを説明して納得してくれるような人間はこのご時世に居るわけがない。
つうかそれは今も昔も変わらないな。
いつの時代だろうが、見えないものの危機感なんてそんなもんだ。
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