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翌日、ベルリンの総統官邸。
朝の穏やかな陽光と静謐な風が窓から執務室へ流れ込む。
「昨日は御苦労だった。
難無く仕事をこなしたらしいが、流石は君達と言うべきか」
執務卓に座するヒトラーは、ほくほくと微笑みながら三人の魔術師を労(ねぎら)った。
「お褒めにあずかり恐悦だアディ君。
だが最近、君達上層部は最近、私達を虐めすぎではないか?」
ヴィクトリカは皮肉げに口許を吊り上げ眼前の総統に問うた。
ヴィクトリカはあろうことか、国家元首たるアドルフ・ヒトラーを愛称で呼ぶ。
それはヴィクトリカがヒトラーと個人的な交遊があるためだ。
もっとも、ナチ党の党員であるハンスはそんなヴィクトリカの怖い物知らずな態度に心穏やかではないようだが。
「・・・レーヴェンフェルト嬢。私語は慎みたまえ」
重々しい声でヴィクトリカに釘を刺したのは長らくヒトラーの傍らで沈黙を保っていた長身の男だ。
彼の名はルドルフ・ヘス。ヒトラーの腹心にして第三帝国の副総統である。
熱烈なナチ信奉者で、かつてヒトラーがワイマール共和国より政権を奪取するために起こした暴動〝ミュンヘン一揆〟
から彼に従っている。また、彼はオカルト思想にも通じており、ハウスホーファーらと共に秘密結社〝トゥーレ協会〟にも関与していた。
それだけではない。〝トゥーレ協会〟解散後、ヒトラーが政権を取った後にはハウスホーファーら旧〝トゥーレ協会〟のメンバーと〝鉄十字機関〟を立ち上げた男でもある。
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