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「・・・これは我ながら最高の発明だと思うのだが、どうかなギュンター君?」
ベルリン郊外に佇むヴィクトリカの工房。
奇妙な液体に満ちたフラスコや、用途不明の実験器具、そして数十冊もの魔導書に埋め尽くされた黴(かび)臭い部屋の中、ヴィクトリカは白銀の小さな筒を日にかざし、得意げに呟いた。
「俺にはガラクタにしか見えねぇけどな。
で、何だよそれ?」
相変わらず喧嘩腰の態度であったが、ギュンターは興味深げに尋ねた。
「これは、私のいつも戦闘時に使っている試験管に変わるものでね。
今までの試験管は使い捨てだったが、これならば戦闘が終わったのちに回収することも可能だ。
それに、ガラスより強度もあるし持ち運びも便利。
これからの戦闘で重宝することになるだろう。
魔術的な仕上も加えてある」
殊更自慢げに、ヴィクトリカは前髪を払い手にした発明品をギュンターの眼前に突き付けた。
「へえ、そりゃ凄ぇな」
ギュンターは賛嘆の声を上げながら、ヴィクトリカの手から発明品を取り上げ、じっくりと観察する。
「・・・また腕をあげたねヴィクトリカ。素晴らしいよ(シュターク)」
突如として、入口の方から穏やかな声が投げ掛けられた。
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