第二夜 〝紳士協定〟

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「エッカート君、盗み聞きとは 趣味が悪いぞ。 相変わらず食えない男だな君は」 ヴィクトリカは切れ長の目で声の主を見遣ると揶喩(やゆ)するように言った。 「誰かと思えばテメェか。ルートヴィッヒ・エッカート」 「やあ、君達も相変わらずでなにより。 君の工房の前を通り掛かったからつい、ね」 悪戯っぽく目を細めると ルートヴィッヒ・エッカートは鳶色のウェーブがかった髪を揺らしながら、二人の方へ歩み寄っていった。 彼-ルートヴィッヒ・エッカートはヴィクトリカらの同僚、つまり〝鉄十字機関〟の一員である。 若干二十五歳にして5=6(アデプタス・マイナー)の位階(魔術師、夜魔の強さを示す位。1=10から6=5まで存在する) に至った、この麗しき魔術師はドイツ屈指の召喚魔術の大家である。 また彼の実力は組織内でも一、ニを争い、これまでに数十もの高位夜魔を葬っているのだ。
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