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「君の神出鬼没にはいつも驚かされるよ」
ヴィクトリカは肩をすくめて嘆息すると、着崩したワイシャツのポケットから煙草の箱を取り出し、その中の一本の紙巻き煙草(シガレット)をくわえた。
「しかし、ヴィクトリカの発明には本当にびっくりだ。科学者にでも転職すべきじゃないかい?・・・それで、コレに名前はあるの?」
にこやかに話を続けながらルートヴィッヒは件の銀の筒をつまみ上げて、そう尋ねた。
「残念ながら、」
しかし、当のヴィクトリカは、盛大に紫煙を吐き出すと髪を掻きむしりつつ不愉快げに答えた。
「ふうん。ま、名前なんて後で幾らでも思い付くさ。それより久々にどう?一杯」
ルートヴィッヒは人の良い笑顔を浮かべながら、ビールを呷(あお)るジェスチャーを示した。
「おお、それは良い。そうだ、最近官庁街の辺りに行きつけのビアホールがあるんだがあそこはオススメだ」
「ったく、好きだねえテメェらは」
勇んで立ち上がり歓声を上げるヴィクトリカを見遣りながら呆れたように顔をしかめるギュンターであったが、彼もまた満更でもないようであった。
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