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午後五時。勤め帰りのサラリーマンや労働者達が足早に行き交う石畳の道。
地平線が赤く染め上がり、立ち並ぶ高層建築が古(いにしえ)の城郭めいたシルエットを浮かび上がらせる。
街路に面して立ち並ぶレストランやビアホールは明かりを燈し、夜支度を始めていた。
喧騒と嬌声とが街路に満ち、ベルリンに再び夜が訪れた。
風に乗って聞こえてくる男達の愉快げな歓声は、いずこのビアホールから発せられたものか・・・・・
「おお、お姫様のお出ましか!!」
「よおギュンター!!まだくたばってなかったのか」
「エッカートの兄貴も元気そうでなによりっす!!」
ヴィクトリカら三人がビアホール・ブリュンヒルトに足を踏み入れるやいなや、ビアホールの店内に騒がしい男どもの声が飛び交った。
「ったく、相変わらず騒がしい奴らだな」
「いらっしゃい。相変わらず騒がしい店だが、ゆっくりしてってくれよ」
大袈裟に眉をひそめて嘆息したヴィクトリカに、馴染みの店主がにこやかに微笑みかけた。
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