どうして?

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私だって、こいつにホレたから、例外ではない。 …いや、ホレている、か。 「?どした?」 いつまでも返ってこない罵声に、エストは不思議そうな顔をしていた。 「…たまには…な、」 と言って、思いっきりエストを引っ張る。 「うおぉ!!」 予想だにしていなかったエストは、もちろんソファに倒れ込む形となった。 「今日だけ…だ。」 「おう?」 「パーティー。付き合ってやるさ。」 「……、ほぅ」 珍しいこともあるもんだ、とエストは心の中で思った。 だって、あのエクルがパーティーに参加だってよ? それこそ… 「天変地異だ」 「殴るぞ。」 「おっかねぇな…」 そういって、エクルの逃げ場を無くし、後ろから抱え込む形で抱きつく。 「…とは言ったものの、何をするかはわからんからな。」 「察しておりますよ。お姫様。」 「気持ち悪い…」 「まぁまぁ、…!そうだ、戦場に行くと思えばいい」 「……は?」 とうとうこの幼馴染みは頭が壊れたか… 「ファロン少佐、顔に思いっきり表情を出すのはやめなさい。傷つくから」 「…善処いたします」 「よろしい」 会話が途切れ、気まずくない、心地よい沈黙が流れる。 先に口を開いたのは、エクルだった。 「…で、戦場に行くってどういう意味だ。」 意味がわからない、という風に首を傾げる。 「ま、あれだ。いつ下心満載の男共に話しかけられるかわからない。常に気をはっていかないとやられるぞって意味だ」 「…ああ、なるほど。つまりは…」 「心配してんのよ、お前さんのこと。」 向き合ってないのでわからないが、きっと今、彼は真剣な顔なのだろう。 本気で、私のことを心配してくれているのだろう… 「さて…と」 エストが立ち上がり、手を差し出す。 その瞬間、もう二人とも軍人ではなく、ただの一組の男と女だ。 「エスコートいたしますよ?美しいお嬢様?」 その手を取って、 「気持ち悪い…」 悪態をついているものの、その顔は笑っていて、 その手を掴んだまま、二人は戦場に駆け出した。
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