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「─…い、おい、起きろ」
…なんて目覚めの悪い朝だ。
朝からこいつの顔を見るなんて…
「…お前今、すっごい失礼なこと考えてただろう?」
「…よく、わかったな、」
呂律の回らない口でそう言ったのは、目覚めの悪いライトニングだった。
本名を棄て、この名になって早数年。
私を元の名で呼ぶのは、妹のセラと…
「おはようさん、エクル」
と、誰も呼ばないあだ名をつけた、この幼なじみ。
こんな顔して、軍の上層部なんだから、気にくわない。
「またまた失礼なこと考えていただろう?」
「……」
それでいて頭がキレる。
何にもならないのを知っていて、思いっきり睨んでみた。
おぉ、怖ぃと対して怖くなさそうに言ってきたので、「あっちに行け、まだ寝る!!」と、再びシーツを頭から被った。
「…朝飯が、」
と、ポツリと呟いた言葉は、聞こえなかったふりをする。
…イライラする。
それはもちろん、現在成り行きで同居中の男に対してだが、それは理不尽な怒りだった。
顔もイケてるし、力もあるし、頭もそこそこいい。
更に言うなら、家事全般もこなして見せるのだから、何もできない私が惨めになってくる。
だから嫌いだ、この男は…
「エクルー、俺腹減ったんだけど…」
ベッドがギシッと軋む。
「…うるさい、あと小一時間待て」
「嘘だろおい、」
背中に程よい体温と体重を感じた。
「重い。のっかかるな。」
「いや。早く起きないと、シーツの中に潜るよ?」
…ふん、やれるものならやって…
バサッ
「!?な、シーツを返せ!!」
エストは難なくライトニングからシーツを奪うと、部屋の隅に投げやる。
そして、一言。
「いいから起きろ。この寝坊助が」
そうやって笑って、額にキスをした。
「~~…、」
すぐにキスをされた場所を手で覆い、こちらを睨めつけてくる。
ゆでダコのような顔で…
それでも暴力で返そうとしないのは、その時の気分か、それともホレた弱味か…
「…起きる、起きるから、早くあっちに行け。」
「おう?なんでだ。」
「…着替える。」
「別にいいじゃねぇか。いまさら…「殺すぞ」
この顔は…本気だ。
「わぁーったよ、」
エストはベッドから立ち上がり、寝室をあとにした。
一人残されたライトニングは、シーツを取ると、またベッドに潜り込んだ。
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