始まり

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珠恵は、兄と電話を切ってから、車の中で考え込んだ。 これから先の事を… 今の現状は、ここを離れる訳にはいかない! 実家からだと、今の職場に通う事は、距離的に無理だから! それと、母の容態で看護が必要があるから、看護を拒否する訳じゃないけど、やっと掴んだ仕事を… 今、悩んでも何か変わる訳じゃない! 気持ちを切り替えて、仕事に専念して、今夜を早く帰れる様にしないと… 再び、珠恵は車を走らせて街に消えて行った。 「ただいま~」 何も無かったかの様に、珠恵は実家の玄関をくぐった。 奥の部屋から、母親が 「あれ~珍しい~あんたが帰ってくるなんて…」 「たまにはね、顔を見せるのも、親孝行だからね」 そう言いながら、母親が居る部屋に入った。 母親は、ちゃぶ台に新聞紙を広げ老眼鏡をかけて読んでいた。 「ねぇ、最近は行方不明になる人が多いね~いったい何処に行くんだろうね~ そんなに、連絡する事が困る事なんだろうかねぇ~」 「ま、人それぞれあるから」 母親は、新聞紙の片隅の記事を指さして「ねぇ、珠恵~ここに変わった事が書いてあるよ! 行方不明者見つかる!て。 それも、行方不明になった時のままの姿で」 「か~さん、何を読んで信じてるの~ そんな事無いんだから…」 「だって、ほら…」 珠恵が母親の近くに寄って、新聞紙の記事を見てみた。 記事には、神隠し見つかる!五年ぶりに再会、と。 記事の内容は 5年前に、新宿で行方不明となった男性(当時18歳)が、突然、沖縄の居酒屋のトイレから出てきた! 服装も、髪型も、全く同じで。 本人の記憶も当時のままで ただ、違うのは、5年の時間が過ぎている事だけ。 そんな内容だった。
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