2人が本棚に入れています
本棚に追加
「父さんが生きていた頃、よく四人で行った小料理屋を予約しておいたから。
そろそろ出ないと」兄が、車の鍵を鞄の中を探しながら声をかけた。
母は
「珠恵~あんたが1番遅いんだから、早く用意してよ!」
「か~さんだって、忘れもの無いの?
出てから、あれやこれや言っても遅いんだからね」
「私は、早くから用意して待ってるんだから!」
そんな母親を見て珠恵も兄も、心が和んた。
母親は、凄く楽しみにしている事が伝わったからである。
車は、目的地の小料理屋に着いた。
母親は開口1番に
「あの時と、まったく変わってしまってるね~何か情緒が無くなったみたい」
小料理屋は、平屋から、4階建に変わっていた。
珠恵も、建物を見上げて
「時間が過ぎるのを感じるね~
父さんも、きっと、びっくりしてるだろうね。」
「父さんなら、この建物を見て、帰る~!て、言いそうだよね。」
と、母はしみじみと言った。
そんな言葉を無視するかの様に、珠恵は車を降りて母親に
「さぁ~行くよ!
これもいいじゃない、新しい門出と思ったら~
ねぇ、兄さん」
「そうだよ、さぁ~早く降りて!
か~さん」
「そうだね」
と、言って母親は車から降りて、珠恵の後を追った。
エレベーターに三人で乗り込んだ。
4階のボタンを押して
エレベーターは、静かに4階に向かった。
扉が開き、母親が降りた!
次に、珠恵が降りようとした時に…
ガタン~
ギィギィギィ~
エレベーターが軋みだした。
母親は、エレベーターの外から心配そうに見ている。
珠恵と兄は、エレベーターの中で、どうする事もできず、ただ音がおさまるのを待った。
その時に…
その音が、おさまる瞬間に、扉が閉まりはじめた。
珠恵と兄は、さほど慌てずに
「か~さん、そこで待ってて~階段を使うから~」
そう言って、エレベーターの中から手を振った。
母親は、少し心配そうに、その光景を見ていた。
エレベーターは、静かに下に下り始めた…
珠恵は、すかさず3階、2階のボタンを押した。
だか、なかなか3階に着かない…
動いているのだが…
なぜ…
最初のコメントを投稿しよう!