始まり

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「父さんが生きていた頃、よく四人で行った小料理屋を予約しておいたから。 そろそろ出ないと」兄が、車の鍵を鞄の中を探しながら声をかけた。 母は 「珠恵~あんたが1番遅いんだから、早く用意してよ!」 「か~さんだって、忘れもの無いの? 出てから、あれやこれや言っても遅いんだからね」 「私は、早くから用意して待ってるんだから!」 そんな母親を見て珠恵も兄も、心が和んた。 母親は、凄く楽しみにしている事が伝わったからである。 車は、目的地の小料理屋に着いた。 母親は開口1番に 「あの時と、まったく変わってしまってるね~何か情緒が無くなったみたい」 小料理屋は、平屋から、4階建に変わっていた。 珠恵も、建物を見上げて 「時間が過ぎるのを感じるね~ 父さんも、きっと、びっくりしてるだろうね。」 「父さんなら、この建物を見て、帰る~!て、言いそうだよね。」 と、母はしみじみと言った。 そんな言葉を無視するかの様に、珠恵は車を降りて母親に 「さぁ~行くよ! これもいいじゃない、新しい門出と思ったら~ ねぇ、兄さん」 「そうだよ、さぁ~早く降りて! か~さん」 「そうだね」 と、言って母親は車から降りて、珠恵の後を追った。 エレベーターに三人で乗り込んだ。 4階のボタンを押して エレベーターは、静かに4階に向かった。 扉が開き、母親が降りた! 次に、珠恵が降りようとした時に… ガタン~ ギィギィギィ~ エレベーターが軋みだした。 母親は、エレベーターの外から心配そうに見ている。 珠恵と兄は、エレベーターの中で、どうする事もできず、ただ音がおさまるのを待った。 その時に… その音が、おさまる瞬間に、扉が閉まりはじめた。 珠恵と兄は、さほど慌てずに 「か~さん、そこで待ってて~階段を使うから~」 そう言って、エレベーターの中から手を振った。 母親は、少し心配そうに、その光景を見ていた。 エレベーターは、静かに下に下り始めた… 珠恵は、すかさず3階、2階のボタンを押した。 だか、なかなか3階に着かない… 動いているのだが… なぜ…
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