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「急がなきゃ、急がなきゃ!遅れちゃう!!」
向こうから走ってくるのは、
「白ウサギ?」
正確には白ウサギの耳をした燕尾服の僕より年下(だろう)の少年だった。
懐中時計を片手に駆けてくる。
僕は、この場所を聞こうとして声を張り上げた。
「すみません!ちょっといいですか?」
手を振り、ウサ耳少年に合図を出すが少年は足を止めない、というより目もくれない。
しきりに遅れる、急がなきゃと叫ぶだけだ。
「ま、待って!ここは…ここはどこなんですか!」
僕が止めても少年は止まらない。
そのまま猛スピードで僕の前を走り抜けていってしまった。
「な、何なんだよ、あの子…。時計持って急いでるなんてさ。『不思議の国のアリス』の白ウサギじゃあるまいし……」
僕は口を尖らせブツブツと文句を言った。
それにしても、ここはいったいどこなのか。
花は足元で陽気に歌っているし、リスは木の上で話しているしで僕の不安は募るばかりだ。
「アリス」
眉をひそめていると、突然後ろから低い男の声がした。
僕は反射的に振り向いた。
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