いやいやいや、あり得ないでしょ

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青年はズンズンと先を歩いていく。 訳も分からないまま僕は黙って青年の後を追いかけた。 あの場に突っ立っていたところで、何の解決にもならないからだ。 少なくとも彼について行けば、何らかの情報が得られるだろう。 「そう言えば、自己紹介がまだだったな。俺は『チェシャ猫』。よろしくなアリス」 青年、チェシャ猫がこちらに首だけを向けてニヤリと笑う。 薄気味悪い笑顔は、なるほど、僕に自然と納得させてくれた。 小道の脇に咲いた花たちが挨拶をしてくる。 「ご機嫌よう、アリス」 「お加減はいかが?アリス」 「素敵な一日なるといいわね、アリス」 「なん、なんだ…」 「挨拶しといてやれよ、アリス。みんなアリスが好きなのさ」 チェシャ猫は相変わらず気味悪く笑いながら、僕を見やった。 アリスと呼ばれるのには納得いかないが、相変わらず自分の名前は思い出せないし、仕方ないので僕はぎこちなく笑いながら花たちに挨拶を返した。 「さぁ、もうすぐ目的地に着くぜ。……っとその前に…」 チェシャ猫が足を急に止めて僕に歩み寄ってきた。
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