雨の話

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   僕は割と活発で、割と明るい奴だと、周りのみんなは思っているはずだ、多分。  でも本当の僕は、弱くて、卑怯で、嘘つきな、最低の人間だ。  友達は少なくはなかったけど、本当の意味で「友達」と言える奴は誰ひとりいなかった。  誰にでも良い顔をしようとして、優しい人のふりをしようとして、自分に嘘をついて、誰にも嫌われないように頑張って、どんどん自分が嫌になる。  そんなことをしているから、これまでの人生で「親友」と呼べるような友達が一人も出来なかったんだ。いつも良い人どまりだった。  だから、誰も本当の僕に、本当の中山賢人に気付かない。    気付いて欲しくも、なかったけれど。  
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