雨の話

10/13
前へ
/79ページ
次へ
   無機質な読経の声が響く。  聞いているうちに、僕の思考も、だんだんとフィルムみたいに薄く、無機質なものになっていく。  こういう場では女子は泣くものだと思っていたけど、案外と、そうでもないらしい。  関わり合いがなかったからか……そう思うと、やり切れなさが沸いてきた。  かと言って、普段彼女のことにまるで無関心だった女子が泣いていたら、僕はきっと、どこか白けた気分になっていただろうと思うけど。  こんな場所に来てまで、そんなことを考えている自分の人間性の底の浅さに、皮肉めいたものを感じずにはいられなかった。    そして、薄っぺらい人間性の僕が、彼女の棺桶に花を手向けるという役割を与えられていることにも。  
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加