雨の話

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     読経が終わってしばらくして、僕は花束を手にして立ち上がる。  名前も知らない花。  一歩一歩、彼女が眠っている棺に近づいて行く。  線香の煙と匂い。  やつれた顔をした、彼女の母親に頭を下げる。  静寂。  花束を手向けようとして、僕は棺桶の中を覗き込む。  白。  真っ白な、彼女の顔。  静寂。 ―――あぁ、そうか。    
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