はじまり

6/6
前へ
/201ページ
次へ
それと同時にドアが開き、ブルーの術衣を着た執刀医が出てきた。 私は勢いよく立ち上がり、医師に駆け寄った。 「兄は!!あのっ、兄は…」 後頭部で結んであったマスクの紐をほどきながら、医師は言う。 「大丈夫、手術は成功しました。 リハビリをすれば元通りになると思います。 詳しくは後程ご説明させていただきますので…」 爽やかにニコッと微笑んで行儀よくお辞儀をした医師は、私の肩にポンッと手を乗せた後、去って行った。 ホッと安堵するのと同時に目から熱いものが込み上げてきた。 ――よかった… よかったよ~ちぃ兄ちゃん… 手で涙を拭っていると、ストレッチャーに乗せられた兄が頭と左肩に包帯を巻き、痛々しい姿で現れた。 「ちぃ兄ちゃん!」 駆け寄った私に、兄は小さく呟いた。 「ゆ…うか…ごめんな…」 .
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

142人が本棚に入れています
本棚に追加