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時は流れた。
その少女と、授業が一緒になった。
またそれも、自分にとってはなんの関係も無い。
授業が始まり、新米の教師がその少女に指摘した。
「~さん。ノートをちゃんと取って!」
教師の声に少女は、ただニコニコと笑っている。
少女の母親が焦った様に口を開いた。
「すみません。この子、字が書けないんです」
その日、家に帰って自室にこもった。
布団に潜り込み、今日の事を考えた。
僕の、この手、この足は何なんだ。
何の為にある。
歩ける足がなく、字すら書ける手もない。
夢があるのに、何も出来無い。
夢がない自分は自由に動かせる、夢がないのに……
夢も無い僕が少女より自由に動いている。
この手やこの足は何の為にある。わからない。
わからない……。
気が付いたら朝になっていた。
何もする気にもならないが学校へ行くため家を出る。
時間がちょうどよく、待つ事なく電車に乗った。
電車に揺られながら車内を見る。
駅を降りて学校へと歩く。
校門をくぐろうとした時、目の端にそれが見えた。
あの少女だ。何か困っている。
どうやら、車椅子のタイヤが引っかかて動けないらしい。
今日は母親がいないらしく、一人でどうにかしようとしている。
しかし、なかなか動き出せない。
僕の、この手この足は……。
僕のこの足は、あの少女に歩み寄る為にある。
僕のこの手は、あの少女に差し延べる為にある。
今日から何かが、変わった気がした。
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