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その言葉に俯いてしまう。 「怖いか?」 なにも答えられない。 「確かに一人で歩くのは怖い」 男は腕を組み静かに頷いた。 「だがな一人じゃない」 俯いた顔をげ、男の顔を見た。上 「そのうち、誰かと道を歩む事になる」 ―誰かと……。それは誰?― 「それはこの道を進めば分かる。ただ今言える事は、それはお前の大切な人だ」 ―…………― 「その人の手を決して離す事なく歩み続けろ」 誰かに言い付けるかのように言う。 「分かったら行け。まぁ分からなくても行け」 そう言うと、一人でカラカラと笑い出した。 その笑顔を見ていたら、進まなければ行けない気がして道の先を見る。 歩み始めようと思い、最後に男の方を見ると。 「じゃあ、気をつけてな」 男は笑顔のまま言う。 ―アナタは進まないの?― 気になって聞いてみた。 その瞬間、男の顔が険しくなった。 「いいから行け」 優しい口調だが、どこか痛い声だった。 無言のままその場を離れた。 怖いのではない、何故かいたたまれない気持ちになったのだ。 歩いていると後ろから声を掛けられた気がした。 振り返るとそこに男の姿は無く、大きな岩があるだけ。 『お前は俺みたいに立ち止まるなよ』 確かにそう聞こえた。 どういう意味だったのか。 前を向き直して進むが、その意味は分からずじまいだった。 その岩にはこう綴られていた。 『愛するモノと何時までも共に。 共に歩み続けよう。 君が歩みを止めてしまっても私はずっと傍にいよう。 それが永久なものだとしても……』 この岩は、お墓。 大切なあの人が眠っている。 だから、私は此処にいる。 決して前に進まない。 何時までも一緒にいよう。 これからもずっと……。
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