始まりの悪夢

2/33
前へ
/76ページ
次へ
相変わらず、眠りは短く、浅く、不安定で、苦しかった。 多くの夢が、恐ろしいスピードで、しかもゆるやかに、流れては、消えていった……。 信号が変わった。 俺は鬱々とした気分に囚われて、動けないでいる。 俺の意識は混濁し麻痺している。 歩道に立っている俺は、俺であって俺でない。 それは俺の皮をかぶった、実体を持たない空虚な風船のような俺だ。 全身がだるい。 魔物が俺を捕まえている。 俺は機械的に歩き出す。 頭はぼんやりとしていて、頭痛が残っている。 俺はまだ夢と戦っていた……。 俺は俺の仕事場へ早く戻らねばならない。 俺の睡眠を、早く取り戻さねばならない。 俺はいつもの薬局でいつもの薬を買って帰る途中だ。 あの夢と戦って勝利し、ぐっすりと眠れる薬を。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加