始まりの悪夢

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肩口に軽いショックがあった。 俺は薬瓶を取り落とした。 俺の精神はこの白い錠剤に閉じ込められている。 瓶詰めにされた錠剤は、地面に静かに横たわり、解放のときをひっそりと待ち続けている。 俺は、錠剤を救ってやらねばならない。 その白い肌を、俺の真っ赤な血液に溶かしこんでやらなければならない。 「チョットマテ、コラ。ソッチハアイサツナシカ」 いきなり意味不明のノイズが伝わってきた。 肩に何かがのせられた。 俺はその不快な異物を払いのけると錠剤を救出すべく、行動を開始した。 今、助けてあげるよ……。 「オイ、コラ」 ふいに爆発が起こった。 俺の体は激しい爆風で飛ばされた。 ……俺は事態を把握できない。 だしぬけに全身の砕け散る感覚が俺を襲い、俺は地面に倒れこんだ。 俺は暗黒世界に囲繞された。 それは時空と絶縁された、空虚と破壊が支配する世界だった。
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