1:Run fast in the Main Street.

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「なんかこうね、スラッとした女の人だったよ。あと左目をずーっとつむってたのよ。病気でもしたんかな?」  母のその報告を受け、ミウは一発で誰の贈り物か悟った。彼女はそのまま家へ上がり、自分の部屋へ携帯と封筒と共に歩いていく。 「良かったねぇ。見つかって」 「うん。でも何というか……」  歩きながら、ミウは色々な驚きのため、言葉に詰まっていた。自分がほぼ1日がかりで探した筈の物が、あっさり見つけられてしまった。勿論嬉しい事は嬉しいのだが、どことなく、複雑な心境を抱いていたのだ。  彼女は部屋のドアを閉め、机に向かう。そして棚からハサミを取り出し、封筒を開ける。案の定、手紙がその中に入っていた。 「なになに……『ミウ君へ』」  さして長くもないそれを、彼女は読み始める。便箋も一枚だけで、地味なデザインの物だった。 『サニー・モールの衣料品店の外で見つけました。昨日特に混んでた店だからね。お隣の店員さんが保管してくれていました』  その文を読み、ミウは再び驚かされた。彼女と交わした、他愛ない日常会話を元にして、彼女は捜索に成功したのだ。つい感心してしまいながら、続く文を読み進めていく。 『ところで、ロックはきちんと掛けといた方が良いと思います。まあ手間が省けたけど』 「……へ?」  しかし、感心は一瞬で打ち消され、別種の驚きと不安感が補填される。  ミウは反射的に、携帯を手に取った。と同時に、ちょうどのタイミングで電話がかかってくる。そして画面には、登録した覚えもないのに、相手の名前に『アイポン』と記されていた。 「……もしもし」 『もしもし、アイルだけども。もう帰ってた?』  恐る恐る、ボタンを押したミウの耳には、全くもって予想通りの声が入って来た。瞬間、その淡々と流れる声に、ミウの心が荒れ始める。 「……いや帰ってたとかそれより……なんで人の個人情報覗いてんの!?」 『別に、もう友達みたいなもんだから良いかと……しかし、自分としては感謝の言葉が無いことに正直ガッカ……』 「あーありがとね!でも常識ってもんがあるでしょ!?」  当然の怒りを表すミウに対し、アイルは、微塵もペースを乱さない。ある意味、確信犯な所があるのだろうか。ミウの苛立ちは続く。 『大丈夫だって。君の電話番号とメールアドレスと、住所と生年月日ぐらいしか見てない』 「十分見過ぎじゃない!ロック抜けてるし!」
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