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「うん、言い過ぎたな」
乱雑にカーテンを閉められたアイルは、無責任に呟いた。文面と違い、反省の意思など殆ど見られない。
「『暴こうと思えば秘密暴けるぞ』ぐらい言いたかったけどなー。まあ今後に期待かな」
彼女は携帯を置くと、言いたい放題好きに言ってくれた。普通に恐ろしい事を口走っているのだが、独り言なだけに、本気なのか冗談なのか皆目見当もつかない。
続けて、彼女はパソコンの電源を入れた。更に立ち上がるまでに、テレビの電源もつけ、ニュース番組を確認する。かと思いきや、衛星放送に切り替えコメディ番組を見始めた。
「お、今日は……あーこの人好きじゃないし」
愚痴りながらも、番組をしっかりチェックし、同時にワープロソフトを起動する。この辺りは手慣れているらしく、トークに耳を傾けながらも、書類らしき物を着々と仕上げていく。
そして、番組が一旦CMに入った時、文書も一通り打ち終わっていた。
「しかし、スタートから好調とは幸先良し……」
彼女はイスに背をもたげ、首と背中の骨を鳴らした。轢かれた背中が、少し痛む。表情は例によって涼しいが、1日の疲れに満足したように見えなくもない。
既に日は落ちており、窓の外は暗い水色で覆われている。月も徐々に目立ちはじめてきた。
「越してきて良かった。たぶん」
そう呟いて、彼女は保存のアイコンをクリックした。そして、テレビの方に再び目を向ける。
トークショーが終わり、番組はコントに移っていた。彼女はそれを、実にくつろいだ表情で――その両目を開けて――楽しんでいた。
――To Be Continued――
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