2:The mind is capricious.

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 ある日曜日の朝だった。  いつもより遅く起きて、家族でご飯を食べて、部屋にこもっていた。やるべき事は昨日までで終わっている。特に予定があるわけでもない。両親も別に出かけるでもない。弟の宿題に付き合う義理もない。ないないない、何にもない……。 「……そだ、アイポンのとこに行こう」  急にそう思い付き、ミウ・コワーサンはベッドから飛び起きた。  思い立ったが吉日。そそくさと二階の部屋から降り、流れるように外へ出て、自転車を駆り出した。  後方から弟の哀れな叫び声が響くが、彼女は振り向かない。あえてペダルを強く漕ぎ、門の外へ飛び出して行った。そしてそのまま、遠くへ行ってしまう。  ……が、別方向から戻って来た。実に稚拙なブラフだが、『どこかに出かけてしまった』という印象さえ与えられれば良いのだ。なんせ、目的地は家の真裏なのである。ものの数分と経たず乗り込めてしまう距離だ。  そうして訪れた、M&Z探偵局の前に、ミウは自転車を停めた。見た目はシンプルなデザインであり、ドアの表に下げられた『OPEN』の文字は、まるで個人経営の喫茶店か何かかと思わせてしまう。 「営業中……大丈夫かな?」  すぐ脇に書かれた『毎週水曜定休』の案内を見ながらも、彼女はノブに手をかけた。  ここに来るのは、一週間ぶりとなる。その日に初めて出会ってから、何度か顔を合わせたりはしたが、中に入った事はない。今日が最初だ。  彼女はゆっくりと手をひねり、ドアを押し、探偵局へと第一歩を踏み入れた。完全には開けず、まず顔を覗き込ませている。 「おはようございま~す……」  耳を向け、中が思ったより静かだった事に気付き、ミウはおもむろに足を入れる。次いで全身を、建物の一階部分へと歩み入れさせていた。  まず出迎えたのは、明るく広い事務所風の空間だった。机が二つL字に並んでおり、一つに誰かが座っている。 「あの……」  その下を向き、仕事をしているらしい女性に、ミウは声をかけた。しかしながら、反応が無い。もう少し近付いてみようとしたが、その時、ある事実に気付かされた。 「……寝てる……」  何の事は無い。彼女はイヤホンを付けたまま、俯いて寝ており、涎で書類らしき物がシミになっていた。 「もしも~し……」  誰なのかは分からないが、ひとまず、ミウは彼女を揺すってみた。仮にも営業中だ。受付ぐらいして貰わないと困る。
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