2:The mind is capricious.

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 アイルはゲームにポーズをかけたのか、暫しミウの方を見ていた。硬直していると言ってもいい。そのまま、時が少し流れる。 「……何か言ってた?ここに来るとき」 「いや、普通に通してくれたよ」 「……ちょっと待ってて」  アイルは表情を変え(傍目には分からんが)、イヤホンを外し、立ち上がって部屋を出た。すぐ横を過ぎていく彼女に、ミウはただならぬオーラを感じていた。  部屋にミウが残されてから数秒後、気になって階段へ向かった彼女は、鈍い音を聞いた。同時に、女性の悲鳴も耳を貫いて来る。 「いったぁーっ!?」 「何やってんだアンタは……!」  まだ階段の中腹頃だったミウだが、轟音と振動にビビってしまった。一瞬足を止めるが、興味本意でもう少しだけ進む。そしてちょっとだけドアを開け、隙間から、その光景を覗いてみた。 「確認取ってない不審者をあっさり入れるってそれは無いだろう……本当に友達だったから良いものを……え?」 「ごめん!だから殴らないで姉ちゃ……痛いっ!」  再度、痛々しい悲鳴がこだました。  タラルと言うのであろう、殴られている女性は、机にうつ伏せて、両手で頭を押さえている。隙間から見える限りでは、頭を打たれているだけで、別に流血とか物々しい事態になったりはしていない。 「(……でも、こっちまで揺れるって何よ?)」  だが、それはあくまで見える限りでの話だ。ミウは先の振動を思い出して、恐ろしい物を感じていた。  殴った衝撃が離れた場所まで伝わるなど、普通あるか?誇張表現で無いとすれば、よほど拳のパワーと頭の頑丈さがなければ、それこそ、物々しい事態になっていただろう。もっとも、普通に誇張表現なのだろうが。 「痛いからもう勘弁して……姉ちゃん……」 「……気を付けなよ。いや本当に」  都合三発の拳が浴びせられたところで、制裁は終わった。まだ机に突っ伏したままのタラルの、涙声の訴えが届いたのだろうか。呆れながら、アイルは溜め息を吐いた。  とそこで、ミウは、アイルの顔と目が自分の方へ向けられたのを見た。一応こっそり降りて来たつもりなのだが、彼女は何か目配せをしている。 「(え……上、上がれって?)」  顎を上げるような仕草から、ミウはそう読み取った。タラルは未だに半泣きでいるらしい。ミウは来たときと同様に、なるべく音を立てずに、階段を登っていった。
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