2:The mind is capricious.

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 ミウがアイルの部屋に再訪した頃、アイルも階段を登ってくる音が聞こえてきた。開けっ放しの扉の前で、二人が並ぶ。 「ま、とりあえず入って」  アイルの腕がベッドを指し、ミウは、そのまま入室して腰掛ける。壁際、横向きにベッドは置かれていて、ちょうどテレビが寝ながら見れる構成となっている。よくある構図なのだろうが、ミウは、意外な横着さを感じていた。 「悪いね、わざわざ来てくれたのに」  やはり淡々とした口調で言いながら、投げていたコントローラをアイルは手にする。そして隣のミウはさておくかのように、再びゲームを始めた。 「(オフでは割とだらくさなのか……?)」  一連の様子を見て、ミウはそう思った。一応片耳だけにしているが、既にイヤホンがはまっており、ゲームへの熱中度がまたしても窺えた。  もっとも、先程自分を上がらせたのは、気遣いによるものなのだろう、とも彼女は思っていた。あのタラルなる人が、怒られている様を見られれば、流石に気まずさが増す。彼女がそれに気付く前に、アイルはミウを去らせたのだ。  改めて、目の前でテレビ画面を注視するこの片目の探偵に、ミウは深い興味を抱いた。そしてそれは彼女に、次なる質問を投げ掛けるよう動かす。 「姉妹でやってるの?姉ちゃんとか言ってたけど」 「うん。なかなか働いてくれないけどねー」  今の状況を分かって言っているのか?とミウは思った。彼女に対し持った想いが、少しぐらつく。  しかしその突っ込みが口から飛び出す前に、彼女の目は、別の方向へ注目させられる。そう、テレビ画面だ。 「……あ、これ《CG5》じゃん!もう買ったの!?」 「お、分かるか」  そのソフトに気付いたミウは、明らかに目の色が変わった。  彼女の言ったCG5とは、《コスモ・ギア》と呼ばれる人気アクションゲームの最新作だ。ロボットに多彩なカスタマイズを施してエイリアンと戦う、いわゆるTPSの形を取るゲームであり、自由度の高さと美麗なグラフィックが売り物である。多少操作が複雑で難易度が高いものの、作り込まれた世界観や、対戦モードの熱さがゲーマー達に受け、今や広い世代から支持されるようになっている。そして、この二人もまた、熱心なファンであった。 「ちょっとやる?まだ隠しとか揃えてないけども」 「もちろん!」  ミウは無邪気にも答え、コントローラを探した。無論、対戦する気マンマンだ。
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