2:The mind is capricious.

8/15
前へ
/85ページ
次へ
 ところで、ミウ達が住んでいるこの町には、《センタリバー》という名前がついている。人口は5万弱。都市郊外に位置し、決して賑わっている町ではないが、かといって寂れてもいない、程よく発展した町である。  ミウは、子どもの頃からこの町で暮らしていた。だから幼なじみも多いし、遊ぶ場所も知っているし、それなりの愛着もある。  そんなミウが向かっていたのは、町の中央図書館だった。別段予定が無い日は、そこで本を適当に読むか、途中で会った友達とどこかへ遊びに行くのが、彼女の習慣だった。  ひとまず行き先を決め、行き慣れた道を進むこと、都合数十分。三階建ての整った建物が見えてきた。 「……あれ?」  が、彼女の思惑は儚くも崩れた。その入り口の所には、『臨時休館』と貼り出されており、駐車場に入る事もできないらしい。 「あーっ……予定見損なってた……」  ミウは頭を掻きながら、自分の失念を悔いた。学校帰りにも時々通っているのに、この体たらくである。ちょっと書きすぎた。  そのまま、彼女は恋人に取り残されたかのように、どうすべきかも分からず立っていた。交通量が増えてきたせいか、排気が少々気になる。 「うーん……もう11時か……」  腕時計を見て、彼女は難しい表情になった。  せっかく外に出てきたのだから、何かしら遊びたいかなあと思う。が、別に外で食べてくるとかは言ってないので、母の食料事情を乱す事になる。つーか携帯忘れてきた。 「やれやれ……戻ろかな」  小さくしかし長めな溜め息を吐いたところで、ミウは帰還を決意した。普段よりもペダルが重く、体の一部と化したアルミフレームも、どこか安定しない感じがした。  特に近道も無いため、国道沿いに出て、左手に次々走り去る車を眺めつつ、彼女はだらだらと自転車を走らせる。実際の疲労以上に、精神的疲労が溜まり始めていたのだ。 「ふー……あ、そうだ」  5分ほど(体感では倍ぐらい)走ったところで、彼女は口に何か入れたくなった。そしてもう少し進んだ所に、彼女の友達がバイトをしているパン(セイン・ゲル・パン)がある事も思い出していた。 「ちょうど良いや……今日シフト入ってたっけ?」  手前の信号で引っ掛かり、足を止めるミウだったが、気分が少し明るくなってきた。  そんな時、左側……すなわち交差点の歩道から、別の自転車が寄ってきた。なぜか近付き、隣にまで来る。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加