2:The mind is capricious.

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「……あれ?」  と、そこでミウは外を見てしまった。フレスと目を合わせ切れなかったからだが、たまたま、見知った顔をまたしても見てしまった。 「ん?誰か居た?」 「ま、まあ……」  その人物は、ミウと目が合った直後、明らかにその目を退けてしまった。店内の方に用があるのに、何かがあって入れない……そんな感じであった。 「……どっか行っちゃったね」 「そうだね……」  窓の外で、明らかに挙動不審な風になっている様を、二人は見送った。ミウの顔が少し落ち着きを取り戻して、改めてフレスと向き合った。やはり彼の笑みを見て赤くなってしまうが、先程までより、流暢に話せているような気がした。  さて、時間は五分程飛ぶ。どうせとりとめの無い会話をしていたのだから、書かずとも問題無い。  ジュースのおかわりを頼み、だいぶ会話も弾んできた二人だったが、新しい入店者が目に入った。さっき二人が目撃した不審人物……そう、例の片目の人だった。 「あー、アイポンじゃない」  その地味で普通な格好をした女性に向け、ミウは挨拶した。すると彼女は、軽く頭を下げつつ、やあだかああだか分からぬ声を発していた。 「(アレ?なんか違う……)」  ミウは彼女の反応に、違和感を感じていた。よそよそしいというわけでは無いが、反応が薄い。まるで別人のようだ、とも感じていた。  しかし、彼女はコーヒーだけを頼むと、ミウとフレスの席にやって来た。そしてそのまま、ミウの隣に、何の躊躇もなく座り込む。 「(いきなり何よ……?)」  ミウは意外そうな顔を浮かべると同時に、少し不快にもなった。せっかく良い感じの雰囲気になったところを、邪魔されたと思ったのだ。  だが、軽く顔を上げたアイルを見て、ミウはそのような感情を消し飛ばされた。  その右目は、今までになく鋭かったのだ。ちょうど、二人が初めて出会った時のような、純粋に真剣さだけで構成されたかのような目だった。それには、フレスも圧倒されてしまう。 「……悪いね、急に」  その一変した空気を抜くように、アイルは口を開いた。二人に向けられたその言葉は、淡々としながら、謝罪の意がこもっていた。 「いや、いいけど……仕事じゃなかったの?」 「それがだ、仕事中なんだよ」  尋ねたミウだが、その返答の意味が分からなかった。どう見てもサボりのようだが、いや、サボりでなくてなんなのか?と考えてしまう。
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