3:What I want to say.

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「あ~、疲れたぁぁ~」  夕暮れ時、喫茶店『カフェ・ドゥ・マーキュリー』の中で、常連客・ミウはだらけた声を上げていた。 「お客さん、和み過ぎですよ」  カウンターのテーブルに思いっ切り上半身を預けるミウへ、ちょっと変えれば場末の居酒屋店主のような言葉をかけたのは、ここのマスターだった。既に天命を知った年齢の彼は、銀に近い白髪をしっかり固め、風格という風格を醸し出している。 「だって、ここのカフェオレが落ち着きますもん。今日も1日肩こった~」  無駄に馴れ馴れしい口調で賛辞を送り、ミウは自分で自分の肩を揉む。ちなみに彼女は、高校三年生であり、何かと勉強で忙しい時期である。学校以外では結構暇してるが。 「それはありがとうございます。後は何か頼まれますか?」 「ん~、じゃ今日は……」  そのマスターの問いに思案するうち、ミウは、何気なく店内を見回した。すると、彼女の知る影が、店の隅の方で見つかった。 「……あれ?アイポンじゃない」  思わぬ発見に驚きと喜びを感じつつ、ミウは席を立った。  アイルは窓辺の席に座っており、目の前にはカップが一つだけ置かれている。ミウは彼女へと、磁石に吸い寄せられるように近づいた。 「アイポン?」 「……ん、ああ……君か」  その時アイルは珍しく、妙にぼんやりした風に外を眺めていた。ゆえに、彼女の接近にも気付かなかったし、よく見ると、カップにはコーヒーがいっぱいに注がれたままだった。そんなアイルに違和感を感じつつも、テーブルを挟んだ向かいの椅子に、ミウは腰掛けた。 「最近よく会うね。あたしたち」 「……そりゃ、自分ら二人が関わらないと、お話が成り立たないからね」 「へ?」  ニッコリとして話しかけたミウに、アイルは色々な意味で穿った答えを返した。ちなみに言うと、ミウは普段は友達と一緒にここへ来るのだが、今日はたまたま一人だけだった。よくできた話だ。 「……ってそれよりさ、なんかいつもと違うじゃない。悩みでもあんの?」  さておき、ミウは話の流れをうまく変え、彼女が感じた違和感について尋ねた。すると、アイルも的中だったのか、焦点の定まっていなかった視線をミウの目に合わせた。 「……聞いてくれんの?」 「うん」 「誰にも言わない?」 「勿論」 「……じゃあ言うけどね……」  二人の友情を確認したところで、アイルは顔を近付けた。耳打ちの形になる。
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