一*爽やかな季節の中、想いは募る

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 ぼんやりと作戦会議を見ていたら、競技を開始するホイッスルが鳴り響いた。  ギャラリーたちの歓声がフィールドに響く。  試合を見ようとフィールドに視線を戻すと、さらに人が増え、いくら背伸びをしてもフィールド内を見ることができなくなってしまっていた。  わたしは恨めしい気持ちで巡を見た。 「どうした?」  わたしより二十センチも背の高い巡は後ろからでもフィールド内が見えるらしい。  わたしの表情にすぐになにを言いたいのか察した巡は苦笑する。 「奏乃は見えないのか」 「うー」  思わず、見上げるような状態で巡をにらみつけてしまう。  見えないのは巡のせいではないのは分かっている。  だけど悠々と見ることが出来ている巡がうらやましくて、にらんでしまった。 「ったく、分かったよ。見えるところを探そう」 「……ありがと」  しかし、どう見てもギャラリーだらけでゆっくりと見られるように見えない。 「オレの教室に行くか?」 「……へっ?」  思いがけない言葉に、ぽかんと口を開けた間抜けな表情で巡を見る。 「奏乃……しまりのない顔だな」  巡はくくっと喉を鳴らし、さらにはおかしそうに目を細めてわたしを見下ろしている。  いつものことだけど、どうしてわたしのことをこんなにからかうわけ?  むすっとにらみつけてやったけど、童顔なわたしがそんな表情をしたってまったく迫力がない。  その証拠に、巡の表情がさらに緩んだ。 「奏乃はほんと、かわいーなっ」  なんて言って、くすくすと笑い出してしまった。  ほんとにもうっ、失礼なヤツ!
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