一*爽やかな季節の中、想いは募る

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「もー」 「悪い、悪い」  本当に悪いと思っているように感じない言葉に、わたしは思わず唇をとがらせた。  すると巡はわたしの唇をつかんできた。 「むぐーっ!」  わたしは驚いて両腕を振り回し、巡の腕をつかんで唇を挟んでいる手を外させた。 「巡っ! なにすんのよっ」 「なにするって、つかみやすそうな口があったから、つい」  くくくっと笑い声を上げながら、巡はわたしを見ている。  さらに文句を言おうとしたら、窓際から歓声が上がった。  そうだった。  わたしはサッカー部の練習試合を見るためにここにやってきたのだ。  すっかり忘れていた。  わたしは慌てて窓際に寄る。  かろうじて一番端っこから外を見ることが出来た。  ここからだと美術室から見るより近く見える。  試合が始まってどれくらい経っているのか分からない。  どういう状況なのかも試合の途中からだから分からないけど、かなり盛り上がっているのは分かった。 「赤チーム、惜しかったなぁ」 「今、どういう状況なんだ?」  巡はわたしの知りたかったことを近くにいる人に聞いてくれた。
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