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「もー」
「悪い、悪い」
本当に悪いと思っているように感じない言葉に、わたしは思わず唇をとがらせた。
すると巡はわたしの唇をつかんできた。
「むぐーっ!」
わたしは驚いて両腕を振り回し、巡の腕をつかんで唇を挟んでいる手を外させた。
「巡っ! なにすんのよっ」
「なにするって、つかみやすそうな口があったから、つい」
くくくっと笑い声を上げながら、巡はわたしを見ている。
さらに文句を言おうとしたら、窓際から歓声が上がった。
そうだった。
わたしはサッカー部の練習試合を見るためにここにやってきたのだ。
すっかり忘れていた。
わたしは慌てて窓際に寄る。
かろうじて一番端っこから外を見ることが出来た。
ここからだと美術室から見るより近く見える。
試合が始まってどれくらい経っているのか分からない。
どういう状況なのかも試合の途中からだから分からないけど、かなり盛り上がっているのは分かった。
「赤チーム、惜しかったなぁ」
「今、どういう状況なんだ?」
巡はわたしの知りたかったことを近くにいる人に聞いてくれた。
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