一*爽やかな季節の中、想いは募る

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「お、メグ。いいところに来たな。すごいぜ、今。一対一で拮抗してるんだよ。このままだとPK戦になるかもな」  見る場所を探しているうちにいつの間にか時間が経ってしまっていたようだ。 「ってか、サッカーって試合時間、どれだけなの?」  基本的なことが分かってないわたしは思わず、そんな質問をしてしまっていた。 「サッカーは前後半に分けて行われて、各四十五分、合計九十分だ」 「ほへー」  巡はなんでも知っていて、わたしの質問にすぐに答えてくれる。 「練習試合だからたぶん、四十五分で終わりにするだろ。で、勝負がつきそうにないから、PK戦で決める、と」  勝敗を教えてくれた彼はどうぞ、とわたしに場所を譲ってくれた。 「あ……すみません、ありがとうございます」 「いいよ、気にしないで。おれ、もう帰るから。メグ、試合結果、明日教えてくれな」 「おー、りょーかい。じゃあな」  巡は手を振ると、わたしがより見やすいように椅子を持ってきてくれた。 「ありがとう」 「奏乃は小さいからな」  にやりと不敵な笑みを巡はわたしに向けてきた。 「小さくて悪かったわねっ」  別にわたしが取り立てて小さいわけではない。  巡が大きいだけじゃない。 「ほら、しっかり立ってないと椅子から落ちるぞ」  わたしは上履きを脱ぎ、椅子の上に立った。  ぐっと視界が高くなり、視野が広くなったような気になる。 「わぁ、よく見える!」 「それは良かった」  いつもなら見上げないといけない巡が眼下にいる。  なんだか変な感じだ。
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