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わたしは棚に手をついて窓の外をじっと見る。
土井先輩はどこにいるのだろう。
必死になって赤いゼッケンを探す。
「土井先輩はたぶん、フィールドの真ん中あたりにいると思うぞ」
巡のアドバイスにわたしはフィールドの中央あたりを見たが、見当たらない。
ボールはわたしから見て右側にあるようで、たくさんの人が固まっている。
ゴールの中には赤いゼッケンをつけた人がいるということは、右側が赤チームで左側が青チームということだろう。
人が固まっていて、土井先輩がどこにいるのか分からない。
グラウンドからは声援が聞こえる。
わたしの真下に黒い頭がたくさん見える。
フィールドに視線を戻す。
両者は拮抗しているのか、赤と青のゼッケンが入り交じった塊はあまり動くことがない。
顧問がメガホンを手になにか指示を出している。
それがきっかけになったようで、動きがでた。
「あ──」
赤いすい星が現れた、と錯覚するほどだった。
塊を切り裂くその人は、土井先輩だった。
歓声が大きくなった。
「さすがだな、土井先輩」
少し下で巡の声が聞こえる。
「お、パスもうまいな」
土井先輩はボールを奪い、左側に向かってキックしていた。
てっきりスペース(選手がいない空間)にボールを蹴ってしまったのではないかと思ったが、それは杞憂だったようだ。
あろうことか、ノーマークの赤チームのフォワードだと思われる人物がゴール手前に立っていた。
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