一*爽やかな季節の中、想いは募る

18/20
前へ
/249ページ
次へ
「いけー!」  聞こえないのは分かっていても、思わずそう叫んでいた。  土井先輩が蹴ったボールは思っている以上に飛翔して、赤チームのフォワードのいるところに届きそうだ。  フォワードはボールに向かって走り、腰で受け止めた。  ボールを地面に落とし、ゴールに向かってドリブルを始めた。  青チームは阻止しようと追いかけているが、赤チームのフォワードはあっという間に青チームのゴール前に到達した。  ゴールの前でシュート!  と思った瞬間。 「ピピピーッ!」  と無情にも試合終了のホイッスルが鳴り響いた。  ボールはゴールキーパーの真横を通り過ぎ、ネットを揺らした。 「あーあ、もう少し早ければなぁ」  せっかくゴールしたのに、時間差で点数にならなかったようだ。  ギャラリーをかき分け、顧問が出てきた。  選手たちは真ん中に集まり、右と左に分かれて整列している。 「PK戦か」  わたしは固唾をのみ、見守った。
/249ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加