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保健室に奏乃を迎えに行くと、ぼろぼろになってるオレのことをやたらに気遣ってくれた。
野原の話では美術準備室の扉の前で倒れたということだったから、あの件の真相に気がついてしまったのだろう。
ぼんやりしているかと思ったら、意外に鋭くて困ってしまった。
しかし、奏乃にちょっかいを出すあいつらがいけないんだ。
一生懸命描いたものを切り裂いたり、その哀しみを乗り越えた上で出した作品で賞を取ったのに、額縁を壊すとか。
額縁の件はやられるのは分かっていたから篠原先生と共謀して仕掛けを施して罠にはめた。
見事に引っかかってくれて、さすがに見逃すわけにもいかなくて自主退部してもらったのだが、そもそもあいつらは素行が悪かったみたいで、人によっては退学だったり転校をさせられた。
分からないようにこっそりとしたはずなんだが、だれかが奏乃に話をしたんだろうな。
まあ、そんな原因の一因を作ってしまったオレとしては自分のしでかした不始末の後始末をしただけだからいいんだが、奏乃を巻き込んでしまったことは申し訳なかった。
だけどオレが側にいることでまた、奏乃に迷惑をかけてしまうと分かっていても、離れることはできなかった。
あいつが他の男を見ていても、それでも側にいたかった。
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