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家に帰ると、案の定、かーさんと環に怒られた。
「こんの馬鹿息子っ! とっとと風呂に入ってこいっ!」
この家で一番怖いのはかーさんだ。
親父は完璧に尻に敷かれている。
それでもオレは両親を尊敬している。
頭が上がらない。
お風呂に入ると激しくしみて、泣けた。
パジャマに着替えて逃れようとしたのに見事につかまり、大げさに包帯を巻かれた。
「うわーっ! しっ、しみるって!」
「ったく、サッカー部の先輩に喧嘩を売ってタイマン張るなんて、無理に決まってるでしょ! ほんっと、あんたが一番の馬鹿よ」
五人の中で一番馬鹿なのは自覚している。
言われなくても分かっている。
「下瀬さんところの娘さんよね。あそこは一人みたいだから、婿入り決定ね」
この家にはプライバシーというやつはない。
なんでも筒抜け、バレバレだ。
「円が言ったのかよ」
「寝言で『奏乃』って言ってたし」
……オレ、どんだけ奏乃に入れ込んでるんだよ。
「巡は意外にも普通の子を選んだのねぇ」
恐るべし、町内! かーさんも環も奏乃のことをしっかり知っているようだ。
「母さん、知らないからそう言えるのよ。あの子、意外にも怖いもの知らずなのよ」
環は奏乃のことを知っているらしく、笑いながら口を開く。
「ほら、あそこの悪ガキがいるじゃない」
「えーっと、鈴木さんのところ?」
「そうそう。身体が大きくていろんな子に意地悪してて。巡も喧嘩したこと、あるでしょ?」
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