二*ラブレターとアントニオ

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『よっし。これで活動ができるだろう?』  自慢げに胸を張る巡に、わたしは心底、呆れてしまった。  こんな感じで巡は突然、わたしの前に現れて、穏やかな生活をかき乱した。  顧問の先生はあまりやる気がなくて満足な指導はしてもらえなかったけど、それでも美術部は楽しかった。  巡はというと、わたしが部室にいる間は絵を描くことはしないで宿題をしたり予習をして、わたしが帰ろうとしたらなぜかついてきた。  それは巡が中学を卒業するまで、続いたのだ。  そして、そもそもの騒動の原因を知ったのは、巡が卒業してからだった。  どこの部が巡を獲得するのか──そんな戦いが繰り広げられていたらしい。
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