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「ねっ、巡っ」
口をふさがれたまま、巡を見上げて口を開く。
「彼女がいないのって、もしかしてっ」
不思議に思っていたのだ。
巡はとにかく、もてる。
茶色かかった柔らかそうな少し長めの髪、焦げ茶色の瞳。
クールな見た目を際立てる黒の細めのフレーム。
まあね、ひいき目に見ていい男、ではある。
頭もいいし、どうやら運動神経もいいらしい。
だけど……意地は悪いし、オレさまだしっ。
告白してくる子に対していっつも無理難題をふっかけて……。
あれ? これってなにかに似てるんだよね。
「かーのっ。またトリップしない!」
巡の一言に、そうだと思い出す。
「そそそそ、そーだ! 巡、なになにっ。今まで、だれとも付き合ってないのって、好きな人がいるから、なのっ?」
わたしの質問に、巡は渋い表情になる。
「オレはおまえと違ってデリケートなの。『土井先輩、かっこいー!』『ステキーっ!』なんてミーハーなこと、出来ないんだよ」
なんだかはぐらかされたような気がするけど、要するに。
「うわぁ、こんなに傲岸不遜な巡が片想いぃ?」
あり得ない! このオレさまな男が乙女チックに片想いだなんて!
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