三*思いもよらない挑戦

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「わたし、一人っ子だから、兄弟が多くてうらやましいな」 「兄弟がいるのはいいけど、うちは五人だから、うるさいぞ」  五人兄弟と言われ、思わず巡の顔をじっと見る。  兄弟が多いのは知っていたけど、そんなにいたなんて初めて知った。 「ご、五人っ?」 「そ。一番上が姉。名前は環(たまき)で二十五歳、次が兄の周(しゅう)で二十一歳、次女の円(まどか)が二十歳、オレ、その下に弟の輪(りん)は十五歳」  一気に言われて、わたしは激しく混乱する。 「女二人に男三人。うるさいこと、この上ないんだぜ」  想像がつかなくて、首をかしげる。 「だから、学校に来てると楽なんだよな」  巡は照れくさそうに喉の奥でくくっと笑い、残りのお弁当を口に運んだ。  巡との付き合いは去年一年間をのぞいて三年目。  知らないことの方が多い。 「さてっと。飯を食ったら、構図を考えようぜ」  わたしが決めかねているのを知っている巡はそう言ってくれたけど、これはわたしがしなければならないことだ。 「もうちょっと一人で考えてみる。どうしても思いつかなかったら相談するから」  わたしのその言葉に巡はじとっとした視線を向けてきた。 「本当か? おまえってほんと、思い詰めるから、心配なんだよなぁ」  むっとして巡をにらみつけると、わざとらしく肩をすくめられた。 「じゃあ、今日、帰るまでに決められなかったら相談しろよ」 「……分かった」  渋々承知して、わたしは残りを食べて片付けて、外に視線を向ける。  グラウンドにはまだ、人は戻ってきていない。  ぱらぱらとクロッキー帳を見つめる。  ずいぶんと荒削りなほぼ棒人間なスケッチを見つめ、どうしようかと悩む。  棒人間を描き写しながら下描きをしてみるが、なんだか迫力に欠ける。  なにが足りないのだろうか。
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