三*思いもよらない挑戦

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 そうしている間に午後の練習が始まったようだ。  ゆらりと陽炎が見える。  外はどれだけ暑くなっているのだろうか。  フィールドに立っている人たちはひっきりなしに額の汗をぬぐっている。  そのなにげない仕草もスケッチする。  自分の視界に入ったフィールドに立っている人を次々と棒人間にしていく。  サッカー部は何度か休憩を挟みながら、夕方まで練習をしていた。  わたしはフィールドに人がいる間はただひたすらクロッキー帳に描き写し、休憩に入っている間は下絵に落とし込む。  なかなか気に入った構図が仕上がらない。  日が傾いてくるのが視界の端に見えてきて、焦りが生まれてきた。  巡はわたしから離れて宿題をしたり、話をしたりしている。  文化祭に出す絵に取りかかっている様子はない。  間に合うのだろうか。  なんて人のことを心配している時間はわたしにはない。  納得できる構図はどうなればいいのだろうか。  土井先輩を際立たせるためには周りの人たちをどう配置すればいいのか。  今まで考えたものを見返してみる。 「どうだ?」  巡が声を掛けてきたことで周りの人たちは帰り支度を始めていることを知った。
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