三*思いもよらない挑戦

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「あー、うん……」  わたしの返事を聞いて、状況が芳しくないことを知った巡はクロッキー帳を取り上げ、ぱらぱらと見ている。 「しっかし、おまえはほっといたらいつまでもスケッチし続けるなぁ」  買ったばかりの真新しかったクロッキー帳も気がついたらずいぶんと消費していた。 「この構図はいいんじゃないのか?」  最後のあたりに何となくまとまってきたものを見て、巡はわたしの目の前に突きつける。 「基本をこれにして、こことここの人をこっちと交換して……」  そうやってアドバイスを受け、わたしは新しいページに描き込んでいく。 「うん、いいじゃないか」 「……そう?」  少し離れてみる。  わたしの記憶の中にあるあの場面が、さらにドラマチックに演出されたような気がする。 「お、いいじゃん。明日から下絵に入って行こうぜ」  巡のその言葉に、わたしは大きくうなずいた。
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