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巡のアドバイスを時々受けながら、わたしはコンクール用の絵を仕上げていった。
間に合わないかと危惧していたけど、イメージがしっかり固まっていたからか迷うことがほとんどなくて思ったよりも順調に作業は進んでいたため、ほぼ終わりと言ってもいい状況になっていた。
「明日には終わりそうだな」
帰る間際、巡は後ろからわたしの絵をのぞき込んでそう言ってきた。
「うん。巡のおかげだね。ありがとう」
「お礼を言うのはまだ早いぜ。仕上げて、賞を取ってからそういうのは言うんだ」
この絵が賞を取れるかどうかは分からないけど、わたしは描き上げられそうなこの状況に満足を覚えていた。
「じゃ、帰ろうか」
わたしはもう少しで終わりそうな絵に布を掛け、美術室の鍵をしっかりとかけたことも確認して、巡と一緒に職員室に鍵を返しにいった。
職員室にはほとんど先生がいなかったけど、数人が残っていた。
「お、今日もお疲れ。気をつけて帰れよ」
「はーい」
声を掛けられ、わたしと巡は元気に返事をして職員室を後にする。
わたしたちはいつものようにくだらない話をしながら、家路についた。
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