177人が本棚に入れています
本棚に追加
明日であの絵が完成する。
なんだかそのことに妙に興奮して、なかなか寝付けなかった。
布団に入る時間はいつもと変わらなかったのに、眠れたのは日付が変わった頃だった。そのせいで、朝、なかなか起きられなかった。
「おはよう……」
目覚ましがなってもなかなか起きられなくて、ようやくベッドから出たのはいつもより三十分ほど遅かったと思う。
制服に着替えてキッチンに行くと、お父さんはすでに会社に行った後で、お母さんはなかなか起きてこなかったわたしに対して、少し呆れていた。
「今日は早く起きて、仕上げに取りかかるんじゃなかったの?」
「うー、そのつもりだったんだけど……。昨日、なかなか寝付けなくって」
食パンを焼いてくれて、インスタントだけどスープも作ってくれた。
黙々と食べ、お弁当を持って学校に向かったのは、すでに九時を過ぎていた。
太陽はすっかり昇りきっていて、地上をじりじりと焼いている。
半袖からのぞいている肌が痛い。
学校にたどり着くとすでに野球部とサッカー部は練習をしていたので邪魔にならないようにぐるりと回って昇降口にたどり着いたとき、日陰に入れたことでほっとした。
靴を脱いで上履きに履き替え、美術室に向かおうとしていたら廊下をだれかが走ってくる音が聞こえた。
廊下を走っていたら先生に怒られるぞと思っていたらそれは巡で、注意をしようと口を開いていつもと様子が違うことに気がつき、いぶかしく思いながら口を閉じた。
「奏乃……」
わたしの目の前に来ると、膝に手を当てて肩で息をしている。
「おはよ、巡。どうしたの、そんなに慌てて?」
巡は大きく深呼吸をして、上体を起こした。
わたしは顔を上げ、巡を見る。
その顔はかなり険しくて、どうすればいいのか分からない。
最初のコメントを投稿しよう!