四*練習試合

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 わたしと巡が美術室の後ろのドアの前でもめていると、前のドアが開いて篠原先生が出てきた。 「下瀬さん……」  こちらも今にも泣き出してしまいそうな表情をしていた。  原因はこの中にあるのだろう。  なにかよからぬことが起こったということは痛いほど分かった。  それも、わたしにとって痛手になる出来事が。 「先生、奏乃にはオレから……」 「いいえ。辛いかもしれないけれど、きちんと本人が見るべきだと思うの」  ──やっぱり。  篠原先生はわたしを手招きする。 「皆本くんからは?」 「いいえ。なにも……聞いてません」  わたしの答えに篠原先生は小さくため息を吐き、わたしの顔をまっすぐと見た。 「昨日、あなたと皆本くんの二人で美術室の戸締まりをしてくれたのよね?」 「はい。二人で鍵を掛けて、閉まっていることを確認しました」 「それで、鍵を職員室に返しに来てくれたのは岡村先生が見ていて、気をつけて帰るようにと声を掛けたとさっき聞いたわ」  昨日の職員室でのことを思い出す。  そうだ。  あの先生の名前が岡村というのを今、思い出した。  三年生のどこのクラスか分からないけど、担任だ。 「岡村先生は昨日、最後まで残っていたみたいなの。その後にだれかが美術室の鍵を借りに来た人はいない」  だけど、と篠原先生は続ける。 「今日、皆本くんが一番に来て、職員室に鍵を取りに行った。昨日、返したままそこには鍵があって、いつもと同じように鍵を開けて、中に入ったら……」  わたしは巡に視線を向ける。  うなだれているため、どんな表情をしているのか分からない。
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