四*練習試合

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 室内は静まりかえっている。  昨日、絵を置いた場所に足を運ぶ。  掛けていた布は遠くに飛ばされていて、イーゼルには無残にも枠だけが残っていた。  中の画布は切り裂かれ、床の上に散乱していた。  だれがどうしてこんなことをしたのか。  わたしはしゃがみ込み、落ちた布片を拾い上げる。  拾った布をスカートの中に詰め込んでいく。  すべてを拾い終わり、わたしは無言で美術室を出た。  心配したように巡が後ろをついてきてくれている。 「……わたし、帰るね」  ショックでどうすればいいのか分からない。 「家まで送っていくよ」 「……いいよ、大丈夫」  肩を落とし、うつむいたまま、昇降口に戻って靴に履き替える。  来た道を戻り、校門を抜ける。  来るときはあんなに暑かったのに、今はもう、暑ささえ感じない。  マンションの入口にどうにかたどり着いて中に入るとき、視界の端に巡が見えたような気がした。 「……ただいま」  出かけたばかりなのにもう帰ってきたわたしを見て、お母さんは苦笑している。 「ずいぶんと早かったわね。絵は完成したの?」 「……ううん」  それだけしか言えなくて、お母さんの作ってくれたお弁当をテーブルの上に置くと、部屋に駆け込んだ。  部屋の中はわたしが出て行った時のままで、ベッドの上の掛け布団はぐちゃぐちゃになっていた。  そこに身体を投げ出し、うつぶせになる。
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