四*練習試合

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「うっ……くっ」  どうすればいいのか分からない。なんであんなことになってしまったのだろう。  昨日までの努力がすべてダメになってしまった。  わたしの夏休みはなんだったのだろうか。  お父さんが言うように、無駄なことだったのか……。  目が溶けてしまうのではないかというほど、わたしの目からは涙が次から次へとあふれてくる。  どうすればこの涙は止まるのだろう。  泣いて泣いて……気がついたら、朝になっていた。  腫れぼったい目のまま、わたしはキッチンへと向かった。  服は昨日のままだ。 「おはよ。巡くんが心配して、夕方に来てくれたのよ」  面倒見のいい巡になんだか腹が立ってくる。 「……ほっといてくれればいいのに」  八つ当たりだって分かっている。  だけどもう、悔しくて仕方がなかった。  スカートのポケットにしまった切り裂かれた絵をテーブルの上にばらまいた。 「もう、絵を描かない!」  わたしの投げ出した切り裂かれた絵をお母さんは大切そうに広げ、元に戻そうとしてくれている。 「まあ……ひどいことをする人がいるものねぇ」  のんびりとした声にわたしは苛立つ。 「お母さんになにが分かるって言うのよっ」  荒げた声にそれでも、お母さんはのほほんと口を開く。 「そうねぇ。辛いんだろうなってことしか、分からないわ。でも、ここで奏乃が諦めるのは、こんな卑劣なことをやった人間を喜ばせるだけだと思うのよね」  お母さんはしわしわになった布を手で丁寧に伸ばしている。 「あら、ここの色なんか素敵じゃない。もう、絵を描かないの? もったいないと思うわ」  テーブルをにらみつけていたわたしは少しだけ、視線を上げる。
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