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クロッキー帳を片付けているところに行って今まで描いてきたすべて取り出そうとして、そこでも異変に気がついた。
どれだけ探しても、わたしのクロッキー帳が見当たらないのだ。
「……巡」
震える身体を抱きしめ、離れた場所で準備をしている巡の名前を呼ぶ。
「どうした?」
あまりの出来事に、棚に身体を預けて、かろうじて立っていられる状態だ。
「わたしの……クロッキー帳が」
声が震えている。
巡は慌ててわたしの側に来て、椅子に座らせてくれた。
そしてわたしの代わりに棚を探してくれている。
「……ないな」
ここにクロッキー帳を片付けているのは一昨日、巡も見ている。
「くそっ」
巡は声を荒げ、棚を叩く。
わたしと巡しかいない美術室にその音が響く。
反射的に身を縮める。
「……ごめん、驚かせた」
大丈夫と首を振りたかったけど、出来なかった。
巡は長めの前髪をつかみ、きつく目を閉じている。
あまりにも険しい表情に、身動きが出来ない。
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