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甲高いホイッスルが鳴り響き、試合が始まった。
久しぶりにフィールドで見る土井先輩の動きは、相変わらず美しかった。
他の部員より明らかに群を抜いている。
土井先輩にボールが渡ると、だれもカットすることが出来ないでいる。
敵チームのフィールドの半分ほどドリブルして、待機しているフォワードにボールをキックする。
ボールを受け取ったフォワードは少しだけドリブルをして、シュートを放つ。
白と黒のボールは白いネットを揺らし、あっという間に赤チームは一点を先取した。
巡を見ると、悔しそうな表情をしている。
負けず嫌いな巡はきっとそれで、闘争心を激しく燃やされたのだろう。
Tシャツの袖をめくり上げ、日に焼けていない白い肩をむき出しにしている。
その表情が悪ガキのようで、そこだけクローズアップしてクロッキー帳に描き込む。
赤チームは土井先輩がいることで攻守のバランスがよいみたいで優位に立っている。
きっと、土井先輩の適切な指令が行き届き、みんなの動きがいいのだろう。
一方の青チームは巡という想定外の人物が入ったことに戸惑っているようで、どうすればいいのか悩んでいるようだ。
そのせいでみんなの動きがばらばらで今一つのようだ。
それでも両者の力はそこそこ拮抗していて、ゲームスタート時に赤チームに一点を許して以来、ぎりぎりのところで攻防している。
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